けんぶつざえもん

見たり読んだりしたことについて、ときどき書きます

「シン・ゴジラ」見てきた。

 

 とりあえず2回。パンフレットは1回目まだあったみたいなんですけど2回目行ったら売り切れてました。
 元のゴジラをちゃんと見たことがないし別に怪獣の素養もないのですが、すごい情報量だし人の感想見るのも面白いし、色々読んだり書いたりしたくなる作品ですね。
 個人的に気になったこととか引っかかったところとかメモしておきます。ネタバレです。登場人物の名前がなかなか覚えられなくてごちゃごちゃなので間違ってたらごめん。

有識者三人について
 閣僚たちは無能ではなかった。それがもたついて見えるとしたら、有能な個々人が縦割り行政の中でうまく動ききれないということで、ラストシーンでの赤坂がまともに機能する組織を作ると言っていたのはそれを受けてのことだったのだと思う。(ただ、組織がうまく動いていたという指摘は約1万5000字の感想で読んでそれはそれで納得した。)
 フェアじゃないなと思ったのは有識者三人の扱いで、至極まっとうなことを言っただけなのにあそこまでdisられてしかも「御用学者」呼ばわりされる(それも政府側から)が納得がいかない。政府に認められて地位はあるという意味で原義に近いの?
 観客の私は東日本大震災の際に日本で物心がついていたので、あの後の流れをどうしても連想して、「政府に都合のよいようなことを言う(と見做された)研究者」というニュアンスかと思ってしまうのだけど、そうではない。「御用学者」という悪口が不当な、無根拠な中傷だった側面からは正しいのだろうか?
 それにしても学者(しかも仮名)が三人出てきたとき、その戯画ぶりに思わず笑ってしまった。ああこの三人がすごい切れ者なのかな??ってちょっと学者萌えな期待をしてしまったのにそんなことはなかったので余計にがっかりした分、悪意のある描写だと感じたようです。なんで(仮名)だったん?
 (二回目鑑賞後)結論を迅速に出せる知識が求められていて、今回呼んだメンバーでは役に立たず時間の無駄だった、ということか。でもそれはあの段階では無駄だった、人選ミスというかそういう仕事をするための研究者じゃなかっただけのことで、人が無能というわけではないのでは。
 とはいってもそれでも尾頭さんは正しい結論にたどり着けたのだしなあ。その差は何だったのか。貰った画像何度もチェックするような切実さがないこと? 学者三人は呼ばれて喋っただけだけど、あの画像は同じ条件で与えられていたのかしら。
 (その後)学者三人が映画監督である、映画監督に似せている、という情報を見て、そりゃもう含意がわからないわーと両手を挙げて降参しました。でもやっぱり「御用学者」という微妙にマッチしてない言葉をなんであえて出したんだ?フェアじゃなくない?という引っかかりは残った。前述の約1万5000字の感想がその辺の解明を試みていて、効果という意味で説得力がありました。

女性登場人物と萌えと恋愛要素について
 作中印象的な女性登場人物は、カヨコ、ヒロミ、それに花森さんなんですが、逆に言えばそれ以外は名前のある女性キャラクターは出てきません。
 それが閣僚とか官僚とかの現状の反映なのだろうなあとも思いますが、なんとなく歪な感じがありました。
 反対に無理に女性登場人物を出して興醒めとなるよりは良いのかもしれません。でも、これが普通ってやっぱり現状がおかしいんじゃないかな…? 「必要がない女性キャラを出すな」もわかるけど「必要がなければ女性キャラを出さない」は違うというか。そりゃ内閣腐も流行るよ! と思いました。
 例を挙げると巨災対のキャラ立ってる系メンバーにもう一人くらい女性がいたらきっと楽しかったのになあ。尾頭さんはクールなキャラとして完璧なんですが、感情移入する対象ではないのですよね。なんか、萌える対象として完璧というか。
 私が巨災対関係者になるほど優秀でとっぱずれた存在だったら、たぶん何かに気づいたときに一人で「あー!あー!」ってわざとらしく叫んだり、新しい知見を得られたときに思わず満面の笑みになったりしてる人だと思います。あ、そもそもそんなに優秀じゃないのは置いておくとして。
 安田があーあーいうとき周囲は多分「あ、なにか気づいたんだな(それを知らせたいんだな)」って気づくし、根岸さんが重要な発見を語りながら思わずにこにこしてたら「発見がうれしいんだな」ってわかるじゃないですか。外から何考えてるかわかりやすいじゃないですか。
 尾頭さんは、滅茶苦茶優秀だし頭の中いろんなこと考えて喜怒哀楽もちゃんとあるのでしょうがいまひとつ何を考えているのかわからない。だからこそ終盤の笑顔が素晴らしいんですけど、そんなわけで、萌える対象としては完璧なんだけど飽くまで萌える対象なんだよなあという感想を抱きました。
 ので、もう一人くらい「考えてることが分かりやすい系」のギーク女性も出してほしかったような気がします。
 ちなみに巨災対、尾頭さん以外も女性がいるとの感想を見ましたが、2回の鑑賞では確認しそびれました。

 …まあ、性別で分けることに無理があるのかもしれません。私だって自分はこれは安田か根岸さんタイプだな…って気持ちで胸がいっぱいになってたし(根岸さんのにこにこ顔たまらない)。
 少なくとも、女性キャラが出てきては恋愛!主人公その他と恋愛!という展開にならなかったのですっきり見られました。たまたま男性だったり女性だったりするだけ、という感じです。
 前述のブログ記事は鑑賞後の補助にいいなあと感心する次第ですが、「恋愛映画」のくだりでは解釈違いです。
 カヨコと矢口、あれを恋愛と言ってしまうと異性同士が立場を超えて意気投合したら恋愛になってしまうのでは?と私は思います。恋愛要素は見たい人が見れば良いもので、別にそれを恋愛と見たいならば見ればいいのですが(それだけの解釈の猶予を持たせてくれた作品に感謝します)、それならば私個人の感想としては、志村は矢口を恋うているともいえるんじゃないでしょうか????!
 内閣腐に関しては、今の自分としてはどれもおいしいけれども作品中の現状通りの恐らくはプラトニックであることに一番の価値があるのではという解釈なので、そういう意味ではあれもこれもどれも恋愛です。あと個人的には一部で夢見られているカヨコと尾頭さんの交流なども見られたら嬉しいです。

 それはさておきどこに書いたら良いのかわからないのですが、花森さんが怒声とともに机叩いて「総理、残念ですがここまでです」って進言するとこめっちゃかっこいいですね!

世界観について
 シン・ゴジラの世界では円谷英二が生まれておらず、そのため怪獣という概念がない、という話(https://twitter.com/saromaten/status/760654661711831040)を聞いて、その世界では戦隊ものは、ロボットアニメは、魔女っ子は、戦闘ヒロインはどんなふうになっていたのかなあ、と思った。よく似てるけど少しだけ違う世界、もっと見てみたかった。
 ゴジラ上陸後の「京急線以外は復旧」のアナウンスや、高校生たちが昨日大変だったねー!みたいにわいわい歩いてる姿から、あんなことがあったのに日常が戻ってきているのが不思議なような、怖いような、ぞくぞくしました。
 とにかく蒲田のがあまりにも怖かったというか生理的嫌悪を感じずにはいられない容姿が忘れられません。こんな災害への対策はしてません!と言われて、これからはしなくちゃ!ってつい思ってしまいました。落ち着いて。
 本当に災害で、いざ来てしまったら一市民にはもはや手の施しようがないし、でも意外と歩くスピードはゆっくり(すり足だった! 野村萬斎と聞いて序破急で進んだり飛び返ったりするの?と呟いたものですがそんなことはなかった。飛び返らなくてよかった)だから、進行方向を目視で確認することもできるし、自分のところに来なければ普通通りの生活ができるわけで、怖すぎる。
 あの世界で東日本大震災があったのかがずっと気になっているけれど、ゴジラが震災の津波その後の原発事故をなぞらえたような形になっていること、作中で一度も触れられていないことから、震災はなかったんじゃないかな派。それにしては避難等の対応がスムーズにいってる感はあるけど。どうなんだろう。